炭鉱×アートで地域の誇りを呼び覚ます

北海道空知地方に眠る炭鉱の記憶

10月4日に我らが北海道で先行公開される大泉洋主演の映画「ぶどうのなみだ」の舞台、北海道空知地方。

この映画で空知は香り豊かなぶどうと芳醇なワインの産地として描かれていますが、空知地方にはもうひとつ、北海道を語るには忘れることのできないストーリーがあります。

それは北海道の近代化を牽引してきた炭鉱の記憶。

戦中と戦後復興の重要なエネルギーとして、北海道でも次々と炭鉱が開かれ、運搬に欠かせない鉄道が敷かれていきました。

炭鉱の石炭生産を支えるために機械、電機、化学など様々な技術が開発され、労働者とその家族の生活のために社宅の水道や電気だけでなく、病院、小売業、映画まで整備されていきました。

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炭鉱×アートで魅力を再発見

炭鉱をただ朽ち果てていく過去の残骸として置き去るのではなく、私たちの今の北海道をつくってきた歴史と遺産を現代アートの力で掘り起こし、地域の誇りを呼び覚ます…そんなまちおこし事業「そらち炭鉱(やま)の記憶アートプロジェクト」がここ数年開催されています。

開催地のひとつ、三笠市奔別の旧住友奔別炭鉱選炭施設に行ってきました。

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40年ものあいだ山の中に取り残され老朽化の激しい炭鉱施設は、廃墟マニアにとっては撮影スポットでも、一般人はなかなか寄り付かない場所。

夏の終わりから秋の終わりまで、人気のないひっそりと静まり返った炭鉱施設を、このアートプロジェクトがアートスペースに塗り替えてしまうわけです。

炭鉱にアートが結びつくことで、これまで足を運ぶはずもなかったはずの人たちが炭鉱を訪れ、思わぬ角度から空知の歴史にふれる機会を得るわけです。

また、アートを展示するスペースとして炭鉱が活用されることで、ただの過去の遺物ではなく、未来に対して可能性を秘めているものとして認識させてくれるのです。

このアートプロジェクトの期間中は丁寧に説明してくれるガイドさんもいて、実際の炭鉱施設を前にしたレクチャーは小難しい歴史書を読むよりリアリティを感じられます。

足を運ぶことで初めて、ここに北海道の今をつくってきた産業と生活文化があったことを想像できるのです。

地域への誇りが魅力を再発掘する

どこの自治体も財政がひっ迫する中、ハコモノを筆頭に、新しく何かをつくって人を呼び込むというのは決して利口な策とはいえません。

そもそも外から人を呼ぶために次々目新しいものをつくっていくのでは、そこに住む住人が地域に誇りを持てるはずもありません。

地域に誇りを持てない住民が、外に地域の魅力を伝えられるはずもないのです。

地域の魅力を伝えられるのは、地域にすでにあるよさを知っている住民、そして新たな角度から新たな価値を見いだせる住民なのです。

このアートプロジェクトで奔別の石炭積み出しホッパー内に設置された巨大なアートは、300人の市民の手によってつくられているそうです。

市民を巻き込んだプロジェクトが、地域への誇りを育てていってくれることでしょう。はたまた主催している札幌市立大学の学生、つまりよそ者が、空知の隠れた魅力を発見し発信してくれることでしょう。

まちの魅力は「つくる」ものではなく「見出す」もの。

あなたの街にも絶対にある、見えてないだけの魅力を、探してみてください。