トークイベント「未来を編集する」@江別港に行ってきた ~ 「衰退の戦略」という言葉と今を敏感に察知する“仲間”たち

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2014年9月27日(土)20:00。

江別市大麻座商店街にある「Community HUB 江別港」にて『未来を編集する~公共圏で生きることを楽しくするための編集とは。』というトークイベントが行われました(北海道ブックフェスの一部として?)

 

パネリスト(ゲスト)は、

・仲俣 暁生(なかまた・あきお)さん 東京から来られた編集者。ウェブサイト「マガジン航」の編集人。

・荒井 宏明(あらい・ひろあき)さん 北海道ブックシェアリングの代表。

・橋本 正彦(はしもと・まさひこ)さん 「Community HUB 江別港」を開設。

・堀 直人(ほり・なおと)さん 日本編集株式会社代表。旭川市のペーパン地区で「米飯十貨店」を営む。

 

 

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ちなみに写真右の本はある大学生の本棚をそのまま持ってきたそう。

 

 

仲俣さんのことは存じ上げませんでしたが、荒井さんは北海道ブックシェアリングのお話をIIHOEの川北秀人さんから伺った時からお会いしたかったし、橋本さんとは過去に中間支援センター研修会で「ファシリテーション」の講師として札幌で出会っていました。堀さんとはとある飲み会で出会い、フェイスブックの書き込みや活動を見ていてゆっくりお話を伺いたいと思っていました。

 

トークの内容はかなりいろんな方向に飛びました。

ゲストも参加者も、それぞれにおもしろい考えや自分なりの意見を持っていて、とても私に刺さりました。

世代間のギャップが激しいと思っていましたが、意外とそうでないのではと思ったり…

メモ的にピックアップしていきます。

 

 

 

こどもに「本を読まないとなにか困ることがあるの?」と聞かれたら…

 

 

荒井さんのNPO・北海道ブックシェアリングは、家庭や団体・企業からいらなくなった本を引き取り、学校図書館や保育施設、最近では被災地などに無償提供して、読書環境の整備を行っている団体です。お仕事上、子どもにこのように質問されるのだそうです。

 

荒井さんの回答とは・・・

 

「本を守るのは命を守る作業だから」

 

いやー、ずっきゅーんと胸を打たれました。

「今は多様性がないと生きていかれない時代。士農工商の時代は多様性なんてない方がよくて、家業だけ身につければよかった」

なるほどなるほど。義務教育なくても家業を継いで生きていくことができたわけですもんね。

私も日々本によって自分の生き方を励まされ、新たな視点をもらっています。

自分の身の回りからだけでは学べないこと、広がらないことって世界にたくさんありますから。

これからをどう生きていくか、それを考えるために本を読んでいます。

 

 

 

投票率や選挙に行くこと、政治にコミットすることについて

 

 

そもそも堀さん(30代)はつい最近選挙に初めて行ったという話から始まりました。

「一票投じても何か変わるわけでもない」「自分が選挙に行くとどのようなことが起こるのか具体的に分らなかった」というのが理由だそうです。私は選挙に行きますが、やっぱり堀さんみたいな気持ちになるのは当然だと思います。

けれどもまちづくりに関わるうち、政治が及ぼす意味を実感し、初めて選挙に行ったのだそうです。

実感。これってものすごく大事ですね。

 

投票率はどうしたら上がるのかという話になりました。

そもそも個別訪問が禁止なのがおかしい。直接公約について「いったいどうやるのか」とか質問してコミュニケーション取りたい、という話が出て、なるほど!と思いました。

公約にはかっこいいことしか書いてない、いったいどう実現するつもりなのか、その方法は現実的で、うかったならほんとに実現してくれるのか、吟味したいと思うのは当たり前ですよね。

「自分のたった一票を投じる意味」や「投じる相手」のことがよくわからないというのは、投票率を下げている一番の理由だと思います。

 

また、確実に政権をとる政党に入れておいて、「次は入れないぞ」と物申す方法もある、と誰かが言いました。

私は、企業が必ず政権をとる方に入れるということが理解できないというか腹立たしかったですが、そういうことなんだ、とちょっとわかった気がしました。

 

 

 

衰退の戦略~「10年後にバブルがあってほしくない」by60代男性

 

 

用意されていたキーワードの一つに「衰退の戦略」というのがあって、それは私が最近よく触れている話題でもありました。

つまり停滞していく経済の中で、いかに心身健康に、心豊かに暮らせるかの戦略ということです。

もう物はあふれかえり、一部の分野をのぞいて仕事の人手は足りています。

仕事がない(ポジティブな意味で、仕事が人を求めていない)という意味では、今まで通り週40時間働くという働き方にすら疑問符が投げかけられているわけです。

今が落ちるとこまで落ちた状態だとしても、上昇は望まない、このまま続けば十分だという意見が、実は参加者に多かったのです。参加者には10代から60代まで幅広くいたのにもかかわらず、です。

 

みんなで「10年後の未来」というキーワードについて考えました。

特にその場では最高齢の、バブルのうまみを味わいきった60代の男性が、「10年後にバブルがあってほしくない」と言ったのには驚きでした。

いまだに、「またバブルを起こすべきだ!バブルを若者に味あわせるべきだ!」なんて唱える高齢男性は多いです。

ああこの人は、これから若者が生きていかなければならない時代も、その若者たちの気持ちも分かっているんだとホッとしました。

 

また、内定が決まった大学4年の男性が、「10年後、内定をくれた会社で自分は働き続けているのか?」(どちらかというとそうは思えないという意味で)と悩んでいるそうです。

私たちは今がこのまま続いてくれるとは信じていない、先行きはあまりに不透明だ、だからこのまま続いてくれるだけで十分うれしいと考えているのです。

 

 

10年後の未来

 

このキーワードについて、参加者ひとりひとり発表していったのですが、私は、「働いてお金を得て、物やサービスを消費する」以外の生き方・暮らし方を習得していたいし、社会全体もそういう方向になっていてほしい」、と言いました。

「ほしい」というか、そうでなければ大抵の人はとても苦しくって生きられないだろうと思うからです。

お金を得る以外の生きる方法を身につければ、誰だって質素でも幸福に生きる可能性を持ちえます。

もう雇われて働くならかなりの確率でお給料は上がらないし、行政も政府もだれも私たちの最低限の生活を保障してはくれない。

そんな時代で生きるためには、お金だけでは到底ムリなのです。だって上がり続ける生活費、税金、下がり続ける年金、お給料に、努力して太刀打ちできるのはほんの一握りの人だけなのです。

 

古市憲寿氏が本に書くように、今の日本はこれから生きていく者にとっては悪いことだらけ。「絶望の国」です。

けれども今回のトークイベントを通して、この時代を穏やかに幸せに生き延びようとする人たちに出会い、楽しく「希望」について語らうことはまだまだできるのだと知りました。

同じことを考え学び、今の時代をしなやかに受け止めながら成長しようとする仲間がきっとたくさんいます。

まさに、自らの手で「未来を編集する」仲間たちです。

 

 

こわくてたまらない、でも。

 

 

ああ、楽しみだ!