幸福への憧れ

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当麻の実家に引っ越して、2階の2つの子ども部屋を整理していたら、古い古いオルゴールを発見した。

写真ではわかりづらいけど、ホコリまみれ。でもホコリをかぶっても、このオルゴールを見ると、うっとりと憧れるような気持ちになるのは子どものころと変わらなかった。

窓辺から溢れる花々。ゆっくりとまわる水車。きっとこの家に住むのは大家族で、犬や猫を飼っていて、窓辺には鳥が遊びに来る。鳥のさえずりや家族の笑い声が絶えず、家の周りには豊かな緑が広がって、頭上にはどこまでも青い空が続く。そんな情景を想像させるすてきな家だ。

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いくら想い出の品でも、もうなんでもとっておくのはやめようと、色々なものを捨てた。このオルゴールも、ザラザラした表面なのでホコリを完全に取り除くのは難しいし、捨ててしまおうと思った。

 

けれど、ふと思い立って、家の裏側にあるレバーを動かした。その途端、やさしいメロディが、ポロンポロンと流れ出した。何の曲かはわからないけれど、やさしいメロディ。

私はしばしその音色に聞き入ってしまった。

 

だんだんと止まりそうなほどにテンポが落ちていくメロディ。水車を手動で回せば、またもとの早さで鳴り出す。

 

私は掃除機とぞうきんを使って、軽くホコリをぬぐった。

やっぱり、捨てられないな。

私はそのオルゴールを、子どものころ使っていた学習机にそっと置いた。