”あなたが守った街のどこかで” 宇多田ヒカル『桜流し』
スポンサーリンク
青森に向かう夜中の新幹線の中で、私は、私の見えている世界を部分的に共有してくれている、数少ない友人に、メールを打った。自分の、その時の状況をかいつまんで。それは今年の冬のこと。
後から知ったのだけれど、その友人は、寝たきりになっていたおじいさまを見送ったばかりで、お通夜やお葬式などの一連のことが終わってやっと一息ついた夜のことだったのだという。
友人は私のメールを受け取って、おじいさまのことは一言も言わず、自分も大変だったのに、私を励ます言葉をくれた。
私は、心細さと、不安と悲しみと戸惑いがごちゃ混ぜになった状態でいたけど、その友人と丁寧に言葉を交わしあったことで、妙に色々なことがはっきりと腑に落ちたのだ。
私の旅は、ただ自分の気を済ますためだけのものになるだろうこと。本当の目的は、願いは、果たせるわけはないこと。でもこのたびが無事終わったからって、気が済むわけもないってこと。目を背けたくて仕方ない”希望のなさ”を、はっきりとつきつけられて旭川に帰るんだろうってこと。
私はそれから毎日問いかけている。
あなたの人生を脅かす、私という存在を消去した世界で、あなたは思い通りの日々を、心穏やかに暮らせていますか。
Everybody finds love in the end
もう二度と会えないなんて信じられない
まだ何も伝えてない
まだ何も伝えてない
開いたばかりの花が散るのを
見ていた木立の遣る瀬無きかな
どんなに怖くたって目を逸らさないよ
全ての終わりに愛があるなら
私の世界もいたって穏やかだよ
どんなに苦しくたって乗り越えてみたいと思った山はもうないから