好きな映画を並べるの巻

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今日は『スノーデン』と『ターミナル』を立て続けに見て、映画のすばらしさを改めて実感したので、私の愛する映画を並べてみる。

 

■救いようのない現実を描く映画

海炭市叙景

私はとにかくリアルな物語が好きだ。うっとりするような美しい物語やファンタジーや、気持ちいいハッピーエンドも好きだけど、「現実はそうだよね」「こういう話が現実にはたくさん転がっているんだよね」「事実は小説よりも奇なり、というか残酷なり」というかんじのストーリーが一番共感できるし、著者や監督に、こういう物語を書いてくれてありがとう、と思う。

海炭市叙景』は、函館市をモデルにした「海炭市」を舞台に描かれる、どこにでもある不況の街を生きる人々の物語だ。

私は一人で車で遠出をするのが好きで、北海道のどんな小さな「何もない」と言われる街でも行ってみたくて、道北・道東・道央を中心に北海道の半分以上の市町村に行ったと思うが、どの街にも共通してあるのは、「この先の繁栄は望むべくもない」という暗黙の了解のようなものだと思う。「それでもこの街に先祖代々の土地があり、家があり、畑があり、歴史があるのだから、多くを望まずここで生きていくのだ」という、無意識の覚悟。東北以北で3番目の規模を誇る旭川市ですら、それをくっきり認識する人々が増えていくだろう(父親は大学時代から旭川近辺に住んでいるが、「あれから(大学時代から)ずっと旭川はちっとも栄えていない。いい街だ」と言っていたっけ。。

「海炭市」はそんな、もっとも北海道らしい、港のあるすたれた街だ。一時は街の一大産業であったであろう造船業も他産業と同様に不況で、造船所の縮小に伴い仕事を失った2人きりの兄妹が大みそかに、なけなしの小銭を握りしめて初日の出を見に山に登る…という物語から始まり、全5話の短編で構成されたオムニバス映画だ。

他の短編も、どこにでもありすぎてあえて取り上げたりしなさそうな平凡な、痛々しいほどにリアルな物語ばかりだ。見ていて気持ちのいい映画でも、楽しい映画でもないかもしれない。人によっては、苦い気持ちになったり、自分の街の未来を憂えて、落ち込んでしまうような映画かもしれない。

でも私はあえて、こういう映画が好きなのだ。言い換えれば、ただその先も淡々と生活が続いていくだけで、大したオチのないような映画。現実にはめったに起こらないようなハッピーエンドではなく、現実にはかなり確率の高いアンハッピーエンドの映画。

だって人は苦しいとき、辛いとき、苦い思いを抱えているときこそ、共感が欲しい生き物なんじゃないか。だとしたら、残酷なまでの現実を描いている物語こそ、私たちに寄り添ってくれる作品なんじゃないかと思う。私は、もしどんな人間になりたいかと言われたら、共感力のある人間になりたい、と答える。なるべく人を否定せず、目の前に人の苦しみに共感してあげられる人間。私自身が、ある恩師に共感をもらったとき、そう感じたんだけど。だから、華やかではないけれど誰もに起こり得る物語、誰もが感じうる気持ちを描いた映画を見ると、少し、自分以外の人間のことを理解できるようになる気がする。

「痛々しいまでにリアルな物語」ジャンルではほかに、『海炭市叙景』と同じ原作者の『そこのみにて光り輝く』『オーバー・フェンス』や、『ふきげんな過去』『セトウツミ』『悪人』『淵に立つ』『ほとりの朔子』『夢売るふたり』『初恋』『ジ・エクストリーム・スキヤキ』『もらとりあむたま子』『アズミハルコは行方不明』なんかを見た。実話をもとにした作品だけど、北海道警の不祥事を描いた『日本で一番悪い奴ら』も主人公の末路がリアルすぎてある意味爽快だった。これからもこういう映画にどんどん出会いたいな。きっといろんな人間を許せるようになるよ。

 

■ピュアで素直な心が幸せへと導く話

『ターミナル』

リップヴァンウィンクルの花嫁』

横道世之介

 

この3本でもう何度も見ているのが、『横道世之介』。吉高由里子演じる祥子の「よのすけさーん!」の声と、石井明美の『CHA-CHA-CHA』が思い浮かぶ。お人よしの大学生・横道世之介高良健吾)は、友達や恋人に振り回されながらめまぐるしくも充実した青春が描かれる。それは、いつか社会人になって世之介と遠く隔たることになった人たちの記憶にも、キラキラとした宝物のような輝きを残す…。世之介のあっけらかんとした素直さや、お調子者の親友・倉持(池松壮亮)の憎めなさ、ゲイの友達・加藤(綾野剛)のリアルさなどが何度見てもしみじみとおもしろい。この映画を見て池松壮亮を知り、彼の出る映画をたくさん見るようになった(脇役で出ている『永い言い訳』も素晴らしかった)。

 

『ターミナル』と『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、主人公がかたや母国でクーデターが起きたばっかりに空港に何カ月も足止めされたクラコウジア(架空の国)人(トム・ハンクス)、かたや出会い系で知り合った人と結婚した若く世間知らずな主婦(黒木華)と、設定は全く異なる。けれどどちらも、理不尽な状況やまわりの悪意に振り回されながらも、誰かを恨んだり卑屈になることなく、人を信じ、戸惑いながらも与えられた環境に適応しようとし、優しくまっすぐな心根を失わない。それが結果、周囲の感動や共感を呼び、人を動かして、よい方へと進めていく…。どんな状況になっても、腐ることなく、誠実に正直に生きていけば、いつか道は開ける…そんなことを教えてくれる、とてもやさしい、愛しいストーリーだ。『ターミナル』はトム・ハンクスのコロコロ変わる表情が愛嬌があって応援したくなるし、『リップ~』は流され続ける頼りない主人公に冷や冷やハラハラさせられる。きっと誰もが「絶対騙されてるって~」と主人公に訴えたくなるが、主人公は最後まで騙されていることに気づいていないのか、周りを信じ続け、何度も転落しかけつつも、ついには穏やかな幸せをつかむ…この映画のキャッチコピー「この世界はさ、本当は幸せだらけなんだよ」がすっと心にしみていく。3時間もの長編なので覚悟がいるけど、またゆっくり見たい映画。

 

■たくましく生きる女性の話

『Flowers』

ある一族の、昭和初期~平成を生きた6人の女性たちが、それぞれがそれぞれの時代で心つよく自分の人生を選び取り命をつないでいく物語。誰もが誰かの娘で、孫で、ひ孫であって、自分の先祖が、いくつもの分かれ道で進むべき道を勇気を持って選び取り懸命に生きてきたからこそ、今の自分がいる…その尊さを教えてくれる映画。何らかの葛藤を持ち、消し去ることのできない悲しみを持ちながらも、朗らかに前向きに歩んでいく6人の女性に、背中を押されます(その6人というのが、蒼井優仲間由紀恵鈴木京香広末涼子竹内結子田中麗奈と超豪華でずぅーっと目の保養です笑)。

 

■人生の寄り道の話

『ほとりの朔子』

マイ・ブルーベリー・ナイツ

『リトル・フォレスト』

『ほとりの朔子』は大学受験失敗で現実逃避中の女の子・朔子(二階堂ふみ二階堂ふみが好きすぎる私です)が主人公。夏の終わりに訪れた海辺の叔母の家で過ごす2週間の物語。

マイ・ブルーベリー・ナイツ』はジャズアーティストのノラ・ジョーンズが主人公のエリザベスを演じる。失恋をきっかけに期限のない旅に出たエリザベスは、メンフィスの酒場やラスベガスの賭場で様々な人生を歩む人々と出会いながら、次第に心癒され、自分自身を再発見し、自分の街と待ってくれている人のところへ戻っていく…というお話。不器用だけど、いつも自分に正直で、感じるままに生きるエリザベスが素敵です。

『リトル・フォレスト』は、東北の農村で半自給自足の暮らしを営む女の子(橋本愛)の生活を季節ごとに描く(DVDだと「夏・秋編」「冬・春編」に分かれている)。彼女が自分の生き方に悩む物語ももちろんおもしろいが、何よりも一人暮らしの女の子が野菜を育てたり山菜や木の実を採ったり保存食を作ったりして、毎日をの生活を工夫しながらつくっていく様子が私にとってはとても興味深く、すでに真似したこと(春のつくしの佃煮、じゃがいもパン)、これからやってみたいこと(干しいもづくり、ウスターソースづくり、それからミズという山菜を見つけたい)もたくさんある。季節が変わるごとに見たくなる作品だ。四季それぞれのストーリーに「春」「夏」「秋」「冬」というFLOWER FLOWER(Yui)のエンディングソングも良い。

 

■実在する人物を知る映画

『スノーデン』

ここ最近の私の中での一番のヒット。スノーデン氏が、所属していたNSAアメリカ国家安全保障局)の個人情報収集の手口を告発するまでに至る物語。スノーデン氏が新聞社を通して告発し世界的な騒動になったのが2013年とつい最近のこと。情報漏洩などの容疑でアメリカから指名手配されるも、亡命先のロシアが彼を引き渡さず、期限付きの居住権を与えたことで、彼は今もモスクワに住んでいるのだそうだ。彼のTwitterアカウントもある。告発した当時は29歳で、今もまだ34歳という若さ。私のような20代の若者にはとてもリアルで身近で、共感しやすい人物ではないだろうか。

スノーデン氏は、高給エリートの地位や、故郷や、家族や長年連れ添った恋人と引き換えに、真実を世界に知らしめ、その是非を人々に問うた。どこまでも自分の心に正直に生きたその勇気を持つスノーデン氏を心から尊敬する。ビデオ中継でスピーチをする最後のシーンでは、彼の尊い志に、胸が熱くなります。

ちなみに映画によると、NSAで秘密裏に進められる様々なプロジェクトを知って葛藤するスノーデン氏を支えた恋人は、スノーデン氏の亡命後、自身もモスクワに渡航して共にいるのだとか…すべてを投げうって世界に隠蔽された真実を知らせてくれた彼のその後の幸せを心の底から願いたくなる、そんな人物なのだ。少なくともこの映画では。

なお、この映画はスノーデン氏本人も出演しているので、リアルタイムに実在する本人が公認する映画なのである。

 好きな映画は、書ききれないけれど、ざっとこんなかんじ。

Filmarksというアプリで自分の見た映画をブックマークできるので、それを使って振り返りながら書きました。

ちなみにこれから見たい映画(上映済みも含む)は「三度目の殺人」「ムーンライト」「愚行録」「すばらしき映画音楽たち」「アリーキャット」「はじまりのうた」「22年目の告白」「夜空はいつでも最高密度の青色だ」「この世界の片隅に」「帝一の國」うわ、めっちゃいっぱいある…