田んぼのお花畑とお気楽な百姓の話

 

この写真はちょっと、専業農家の人が見たら笑っちゃうよね。

 

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田んぼの一部が、こんなに雑草に覆われ、鮮やかなまでに花を咲かせている図なんて(だいたい、オモダカとコナギ)。

私も通りかかるたび、ついクスッと笑ってしまう。それは雑草を退治しきれなかった父をバカにしているのではなく、単純に面白いと思うからだ。こんな田んぼ、他に見たことないもの(これは、苗が足りなかったか、根を張らなかったかでほとんど稲がない場所で、そこの雑草に手を付けるのはほとんど意味がないから父が放置しているんだと思う)。

 

みんな、農薬の力を借りて、本当に整然とした美しい田んぼだよね。風にそよぐのは稲だけ。人間の片っぽの足裏の面積には2000粒の種が眠っているというのに。雑草は全然生えてこない。

そうじゃなきゃ、国民の主食を賄うことはできないものね。

我が家は、雑草に負けたり、台風に倒されて多少収量が落ちたからって、家族が食べられればいいわけだから。そんで安心安全でさ。気楽なもんだよね。

 

こんな田んぼを見ると、いろんな想いがふとよぎって、笑ってしまう。

でも私にはこんな賑やかな田んぼが心地いい。たとえ腰を痛くしながら手で除草する羽目になろうとも。1億人を食べさせているプロの農家さんにしたら、ほんとお気楽だって、笑われちゃうよね。

 

お気楽に、自分の食べるものを、作っていきたい。天候や、野生動物に振り回され、くっそーって言いながら。

 

P.S.

井上雅彦さんのマンガ「バガボンド」の主人公・宮本武蔵が、ひたすらに剣豪を斬りまくった後に、土地の痩せた飢饉の村で、田んぼを作っていく話、とても素晴らしいんだ。今度はそのことを書きたいな。

8月、秋の空

北海道はお盆を過ぎると秋、というのは本当で。

でも今年は8月頭から秋の空なんだなあ。

この連休とお盆、最高気温が20度ちょっとで、畑仕事はしやすいけれど、30度前後をずっと体感していた体には、さすがに寒く…フリースなどきながらトマトのへた取りをやっていましたよ(トマトのへた取りはトマトジュース作る準備。ずっと水に触っているので、いっそう寒いのです)。

 

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(これは今年8月8日の写真)

 

こんな空は、あの日が近いことを教えてくれる。

これから毎年、想い出すのだろう。

 

たとえ苦しい記憶であろうとも、心の中に、誰にも言えないほど大切な人が棲んでいるのは、それはもしかしたら、幸せなことなのかもしれない。

 

秋の空だよ…

今日の発見、むらさきのほし。

 

今日クローバー畑の横に見つけた花は紫色のちいさなちいさなお星さまのようだった。

 

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真夏の暑気に旺盛に育つ無数の植物の陰に、ほのかに瞬く紫の光に、私はすっかり心奪われた。

花ひとつだけ見ても(花の大きさは小指の爪の4分の1くらい)愛おしくなるほど愛らしいし、群生して咲く姿は、うちの星空みたいだ。

 

花と葉っぱの形からするに明らかにマメ科マメ科の中でもそうとう花が小さい部類なんじゃないかな?

でも買ったばかりの「植調 雑草大鑑」にも載っておらず…名前はまだわからない。

これだから私は外を歩いていると植物たちに釘付けになる。毎日新しい発見がある。

”裏切られても変わらない” 宇多田ヒカル『Forevermore』

 

宇多田ヒカルの最新曲、『Forevermore』。

ドラマは全く知らなくて、宇多田ヒカルの公式ツイッターで知って、YouTubeでショートバージョンを聞いて、即MP3を購入した。

宇多田ヒカルのアルバム『Fantôme』から、宇多田ヒカルはずっとひとつのことについて歌っているような気がしてならない。

 

それは、「私の中の消えないあなた」。

 

『道』も『真夏の通り雨』も『桜流し』も『大空で抱きしめて』も。

 

もう触れられないほど遠くに行った「あなた」。この世を旅立ったなら会えるかもしれないくらい二度と会えないであろう「あなた」。

 

会えないし、言葉も聞けないのに、おかしいよね。また今日も「あなた」と会話していたよ。

 

あなたの代わりなんていやしない

こればっかりは

裏切られても変わらない

Others come and go

But you're in my soul forevermore

いつまでも いつまでも

いつまでもそうよ

 

”傷ついたのはお互い様” 宇多田ヒカル『大空で抱きしめて』

 

歌詞の紹介は、宇多田ヒカル率が高くなる。

宇多田ヒカル自身、作品のパーツで特に歌詞を重要視しているという。

難しい言葉を使わずに、でも独特の取り合わせをする宇多田ヒカルの歌詞に、私はいつも胸を突かれ、見ないようにしていた記憶を掘り起こし、押し込めていた感情を抉り出してしまう。

 

いつの日かまた会えたとしたら

最後と言わずにキスをして

もし夢の中でしか会えないなら

朝まで私を抱きしめて

 

純なあなたが誤解するから

おしゃべりな私を黙らせて

傷ついたのはお互い様だから

四の五の言わずに抱きしめて

 

苦しいのはきっと私だけじゃない。

不器用に正義を振りかざして、あなたの反応をジャッジしようとした、私の方が傷は浅いのかもしれない。

ふとそんなことを思った。

西川さんも歌ってるよ。

「真実をぶつけ合うのがいったい何になる?」

 

「NO」の向こうの「YES」

 

最所あさみさんのnote

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を読んだ。

「妻への家路」という中国映画(あらすじ:文化大革命終結し、20年ぶりに解放された夫が喜び勇んで家に帰ってみると、最愛の妻は心労のために夫の記憶だけを失っていたー)について書かれたコラムだ。

私はこの映画のタイトルのみ知っていてまだ見ていないが、最所さんの感想にズキュンときてしまったので引用してご紹介させていただく。

 

人はみな、自分に「YES」と言ってくれる人を探し求めているものだと思います。

でも本当に大切にすべき愛情は大声で愛を叫んでくれる人ではなく、静かに大きな「YES」をもって待っていてくれる人なんじゃないかと思うのです。

何ができるとか、肩書きとか評価なんてものに左右されずに、いつもそこに佇んで、「YES」と微笑んでくれる人。

 

私はこの文を読んで、自分も見事にあてはまってしまうなあと思いつつ、同時に考えた。

 

突きつけられたNOの後ろに、見ようとしなければ見えないYESもあるのではないかと。

 

最所さんの言うとおり得難い愛情である「YES」はとても静かで控えめで、ぜんぜん主張しない。だから見えない。気づかない。本当はひそやかに「YES」をくれているのに、ともすれば「NO」のように思えることすらある。

 

「NO」は「NO」でしかない。そういう拒絶もあった。けれども、あなたが身を引きながら静かに私に送った「NO」の向こうには、痛々しいほどにやさしい「YES」があったのではないか?

 

最所さんのコラムを読みながら、何度振り返ったかわからない記憶を改めて捉えなおそうと試みる。

あなたの最後の「手紙」から何度、「意味」を取り出そうとしただろう。

覚えてしまうほどに読んだ「手紙」。怖くてもう開けない「手紙」。

 

冷たく微笑んで突きつけた「NO」の向こうに、もしかしたら静かな「YES」があるのかもしれない、それは今でももしかしたらやさしく私を包み続けているのかもしれない。そんなことを気づかせてくれるすてきなコラムだった。

「妻への家路」を近いうちに見てみようと思う。

 

妻への家路 [DVD]

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”会話”

 

蒸し暑い日々が落ち着いて、北海道らしいカラッとした暑さになってきた。

午前中に田んぼに入って、疲れ果ててリビングのソファに寝っ転がる。

網戸の向こうで、木々の葉がさやさやと音を立てると同時に、涼しい風が入ってくる。


――あの木はなんていう木?


頭の中で問いかける。


――こちらは毎日真夏日だよ。あなたの住む森は涼しいの?

――もうすぐお盆だね。あのうろこ雲の日からもうすぐ1年だね。


私には手紙を送るべき住所も電話をかけるべき番号も分からないけれど、いつもあなたに問いかけて、あなたの返事を想像する。


――1年はあっという間でしたね。お互い環境の変化があって、心境の変化があって、色々なことが、すっかり、変わってしまいましたね。


そうだね。時間が流れるのはあっという間だね。どんどん過去になっていくのは悲しいけれど、時間が流れるから歩き出すことができるとも言えるよね。

もしも時間があの2月のまま止まっていたなら、心が耐えられるわけない。


これはただの私の想像。妄想ともいう。あなたと交わせたであろう幾千もの豊かな会話を想像する。私の知るかぎりのあなたで、精いっぱい描いてみる。


誰かを失うということは、その人との会話をも失うということなんだよね。
まるで修学旅行の夜のように、朝まで話したって話は尽きることがないと思っていたよ。

 

夢の途中で目を覚まし

まぶた閉じても戻れない

さっきまであなたがいた未来

尋ねて 明日へ

 

by 宇多田ヒカル真夏の通り雨

 

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